歯ぎしりとは、主に就寝中に歯を「ギリギリ」「カチカチ」と接触させてしまう習癖(くせ)のようなもので、食いしばりとは、歯をぐっと噛み締めてしまう行為の事を言います。
歯ぎしりも食いしばりも、この行為に意味はありません。つまり非機能的、お口の役割として必要ではない行為と言えます。これらの、非機能的な歯の接触を歯科用語では「ブラキシズム」と言います。
ブラキシズムの原因についてはひとそれぞれ、様々であり、現在のところ完全に解明されているものではありません。ストレス・飲酒・薬物など、様々な要因が関与していることはわかっていますが、それらを特定することは困難といえます。
歯ぎしりや食いしばりは、経年とともに歯や顎に影響が強くなり、やがては痛みや歯の摩耗・チップ・破折、顎関節への悪影響へと繋がり、それが原因で頭痛や肩こりなど、身体への影響が出てしまうこともあります。
上下の歯をギリギリとこすり合わせる行為です。咬耗という歯のすり減りや、歯のチップ・治療歯の脱離が起きやすい歯ぎしりです。
カチカチと歯を上下に噛み合わせる行為です。歯のチップや治療歯の脱離、歯周組織に影響が出やすい歯ぎしりです。
歯をギューッと強く噛みしめる行為です。歯や顎への負担が大きく、顎関節症や肩こり・首こり・顔面痛などを引き起こします。
歯ぎしりは、原因が特定しにくくその行為自体を止める治療法というものが現在のところ確立されていません。そのため、歯ぎしりに対する治療法は対処療法が中心となります。
歯ぎしりから歯や顎をを守るための手段としては、ナイトガードというマウスピースが有効です。
ナイトガードは主に就寝時用のマウスピースで、歯と歯の緩衝材としての役割を果たします。歯と歯の直接の接触を防ぐことで歯の摩耗やチップ・脱離を防ぎ、緩衝力によって顎や歯の根への負担を軽減します。
就寝中は、実は覚醒時よりも咬合力が強く、過去の研究では、睡眠時咬合力は覚醒時に比べ116%もあったという報告(※1)もあります。即ち、睡眠時は覚醒時よりも歯を守る必要があります。
※1)各被験者の最大咬合力に対する睡眠時咬合力の比率は平均53.1%であり,最大のものは睡眠時咬合力が覚醒時の最大咬合力を超えており,111.6%であった.
歯ぎしりや食いしばりが強いと、歯や顎・身体に様々な症状が現れます。
食いしばりや歯ぎしりが原因で、咬耗・虫歯・破折などの諸症状が現れた患者様の治療例です。
Before
After
インプラントやセラミックの被せ物などで、失った歯質や歯を回復しましたが、元々の原因である食いしばりや歯ぎしりが治ったわけではありません。
治療後はこの状態を保つため、ナイトガードによる歯あ顎の保護や、定期的なメインテナンスで経過を観察していいきます。
治療の内容 | スタンダードインプラント4本とラミネートベニア8歯、オフィスホワイトニングによる治療と咬み合わせの治療。 |
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期間・回数 | 1年・18回(カウンセリング・検査・歯周病治療含む) |
費用 | 自由診療:スタンダードインプラント×4歯+セラミッククラウン×8歯+咬み合わせ治療+オフィスホワイトニング 総額 2,980,000円(税込3,278,000円) |
リスク・副作用 |
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歯ぎしりや食いしばり、顎の痛みなどの顎関節症の症状が出ている場合、治療の一環として保険治療でナイトガードを作成することができます。
費用は3割負担の方の場合で3,000〜5,000円程度。但し、症状がない方に予防目的で保険を使用することはできません。
歯ぎしりや食いしばりを原因から治療する方法が確立されていない中、歯や顎に影響が出ている状態で、このナイトガードをしなければ、その症状は悪化の一途を辿ります。
最初は、「マウスピースを嵌めて寝るなんて違和感が強くて無理」と感じる方も多くいらっしゃいますが、慣れてしまえば逆にマウスピースがなければ寝れなくなるという人もいらっしゃいます。慣れるまでは少し寝付きに時間がかかるかもしれませんが、まずは装着して眠る練習をしてみてください。
ナイトガードには、歯の症状や歯ぎしり・食いしばりの状態によって、複数の種類があります。主には緩衝力の強いソフトタイプ、そして薄くて違和感の少ないハードタイプです。また、それぞれ厚みにもバリエーションがあり、上顎につけるものや下顎につけるものなど、あなたの症状にあったマウスピースを作ることができます。
咬合力が強くなく、顎の関節に痛みや疲れを感じやすい方向け
厚み:1mm・2mm
咬合力が強い方向け
厚み:0.5mm・1mm・2mm
ナイトガードは、現在ではネットショップなどで市販のものも手に入れることができます。むしろ、保険を使って作るナイトガードよりも安価で手に入ることがほとんどです。中には「歯科技工士監修」などと銘打たれたものもあり、あたかも安心して利用できるように売られているものもあります。
市販のナイトガードが悪いとは言いませんが、歯科医院で治療用に作成するものとは以下の違いがありますので、理解の上ご使用頂く必要があります。
通常、歯科医院でナイトガードを作る際は、歯や顎の検査をして、その症状や歯の形に応じたマウスピースを作成します。そのため、自分の歯型にぴったりのマウスピースとなり、均等に力がかかるものが作成されます。た、咬合力や歯ぎしりの種類に応じて、厚みや素材なども考慮して作成します。
市販のものの場合、誰にでも合うように奥歯のみ噛むように作成されたものや、熱で温めることで歯型に合わせて圧接させるものなどがあります。もちろん、これらで問題がない人もいるかもしれませんが、この場合奥歯のみ噛み込んでしまう癖がついたり、咬み合わせを変えてしまうリスクなども考えられます。
これらのリスクを避けたい場合は、歯科医院でナイトガードを作成して、定期的に歯状態も診てもらう検診を受けていただくことが、歯を守るためには良いと考えます。
ナイトガードは、基本的に就寝前に装着します。ただし、歯科医師に勧められた場合や、日中の食いしばりが強い場合は、日中(仕事中や勉強中)も着けて頂いたほうが良い場合もあります。詳しくは担当歯科医師・歯科衛生士に聞きましょう。
起床後、歯磨き時に同じ歯ブラシでいいので、軽くブラッシングしながら水で洗い流します。目で見える汚れがあれば、しっかり落としておきましょう。固まると歯石にように落ちにくくなります。
日々のお掃除は、取り外しの際の洗浄で大丈夫ですが、汚れが目立ったり着色してきた場合は、マウスピース用洗浄剤もしくは入れ歯用洗浄剤を使用することで清潔に保つことができます。
マウスピースが破れたら、新しいものに取り替えましょう。前回作成時から治療した歯がなく、歯型が変わっていないようであれば前回の模型から作成することができます。模型を持ち帰った場合は保管しておきましょう。
歯ぎしりや食いしばりの影響が口腔内に現れてしまうと、そこからどんどん症状が悪化してしまうことがあります。
そこで、さらなる悪化を防ぐための手段の一つがナイトガードで歯を守ることですが、咬合力が強すぎると、このナイトガードだけでは影響を防ぐことができない場合もあります。
近年、そんな強い食いしばりの対策として、ボトックス咬筋療法が歯科でも取り扱われるようになりました。ボトックスとはボツリヌス菌から産出される天然のタンパク質を咬筋に注入することで、緊張した筋肉を和らげる働きを利用した食いしばりの改善治療です。
ボトックス咬筋治療による効果は、おおよそ半年程度と永続的なものではありませんが、継続して打つことで歯や顎へのダメージを物理的に減らせることが期待できます。
現在のところ大きな副作用はない治療と言われていますが、顎の筋肉は咀嚼や会話をするためにも重要な筋肉ですので、使用方法や容量の遵守はとても重要です。歯ぎしりや食いしばりでお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。
歯のすり減り、知覚過敏、顎の痛みや首・肩こりなどの咬合関連症が現れたら、早めに対処療法を行うことが必要です。
歯ぎしりや食いしばりは、確かに原因治療を行うことは難しい治療ではあります。しかし、だからといって放置しておけば、歯はどんどん咬耗が進み、歯の根や顎へのダメージは蓄積して、抜歯や顎関節症の原因になることもあります。
そのため、失った歯質を詰め物や被せ物でリカバリーしたり、これ以上の悪化を防ぐためのナイトガードを作成する必要があります。
咬合力による歯へのダメージは、ゆっくりじっくりお口の中で蓄積して、ある時突然大きな痛みや症状へと進行することがあります。「同居人から歯ぎしりを指摘された」「朝起きたら顎や歯の根が痛かった」など心当たりがあるなら、平時に痛むことがなくても早めにご相談にお越しください。
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