「歯が折れる・欠ける」というような状態は、とても痛そうですが簡単に想像できますよね。見えている歯の部分が欠けたり折れたりすることを「歯冠破折(しかんはせつ)」と言います。
反対に、歯の歯茎に埋まった見えていない部分が割れることもあります。歯の根の部分にヒビが入ったり、割れてしまった状態のことを「歯根破折(しこんはせつ)」と言います。意外にも、抜歯の主な原因について調査した統計によれば、第一位・歯周病(37.1%)、第二位・う蝕(虫歯)(29.2%)、第三位に破折 (17.8%) が挙がるほど、歯にとって恐ろしい症状の一つと言えます。(※1)
※1)抜歯の主原因別の割合で最も多かったのは歯周病(37.1%)、次いでう蝕(29.2%)、破折 (17.8%)、その他(7.6%)、埋伏歯(5.0%)、矯正(1.9%)の順となった。
歯根破折は日本人における抜歯原因の第3位にあげられるほど、歯を失う原因となり得る疾患です。しかし、そもそも天然の健康な歯においては、この歯根破折は簡単に起こるものではありません。それは、歯は体の中でも最も固い組織を保ちながら、金属とは違ってしなる力があり、多少のダメージや圧力が加わっても、しなっていなしたり、吸収したりするためです。
しかしそんな歯も、ある条件を満たすとこのしなりを失うことになります。それが抜髄(歯の神経を取る処置)です。歯は神経を失うと血管も一緒に取り除かれるため、歯に栄養を供給する術をなくします。そうなると歯は枯れ枝のようにしなりを失い、割れたり折れやすくなってしまい、破折を引き起こしやすい状態になります。
ある論文(※2)でも、この歯根破折を防ぐことが、今後の予防診療においても大きな問題になるということを問題定義されています。
※2)Axelsson ら1)はう蝕と歯周病に対するプラークコントロールプログラムの 30 年間にわたる長期臨床経過を確認し,257 名の患者における抜歯歯数は 173 歯であり,その原因として歯根破折(108 歯,62.4%)が最も多いと報告した.さらに,「より高度なメインテナンスを受けた場合,歯を失う主な原因は cast post か screw post が挿入された失活歯の根破折であり,う蝕や歯周病で歯を失うことは少ない」と明記しており,このことから今後歯科における予防診療が進むにつれて歯根破折がより大きな問題となることは容易に想像できる
では、歯根破折を起こしたら、実際にどんな自覚症状を覚えるのでしょうか。
神経を抜いた歯にこのような症状を感じたら、痛みがなくても一度歯科に診てもらった方が良いと思います。そもそも神経のない歯に起こっているため、初期では痛みを感じにくく、歯医者に行かない方も少なくありません。しかしそのまま確信が持てずに症状の進行を待ってしまうと、細菌が歯のヒビから歯の根通して歯茎や歯を支える骨にまわり、激しい痛みを覚えることもあります。
歯根破折の原因は様々ですが、奥歯においては咬合力(噛む力)が原因になることが多いと言われています。長い年月をかけて強く噛む力が歯に負担をかけることで、歯にヒビが入ります。破折した部分から細菌が入り込み、周辺の歯茎が腫れたり、噛んだ時に痛みを感じたりするようになります。
また、細菌感染による炎症で周辺の骨が少しずつ溶け始め、隣の歯にも影響をおよぼす場合もあるため、歯根破折を放置するのは大変危険です。
そして、咬合力が原因の破折の中でもリスクが高くなる条件として次の3つが挙げられます。
神経を抜いてしまった歯は、健康な歯に比べて柔軟性が無く力を逃すことができなくなります。枯れ木のように「ポキッ」と折れやすくなります。
また、被せ物を支える土台(コア)が金属だと、残った歯質との強度に差があるため、強い力が歯にかかると弱い方の歯質が割れてしまいます。
人間の噛む力・顎の力は非常に強く、前歯と奥歯が適切に噛み合うことで初めてその負担を適切に分担することができるようになっています。
不正咬合で特定の場所に過剰な負担がかかる場合は破折しやすいと言えます。
元々咬合力が強い方や、力仕事をしており食いしばりが日常的にが多い方は、自然と大きな負荷が歯にかかってしまいます。
ギリギリと歯ぎしりをしてしまう習慣がある方も過剰な負担を無意識にかけてしまっています。
破折した部分から細菌が入り込み、周辺の歯茎が腫れたり、噛んだ時に痛みを感じたりするようになります。また細菌感染による炎症で周辺の骨が少しずつ溶け始め隣の歯にも影響を及ぼすこともあります。
歯根破折は起きてしまうと抜歯以外の余地がほとんど無い厄介な状態です。最初は痛みなどがない場合もあり、抜歯を受け入れられない方もおられますが、抜歯をしなければ割れ目から雑菌が入り込み歯ぐきが炎症を起こす場合もあり、大変な痛みを伴います。
また、その状態で放置してしまうと、顎の骨の吸収が始まり、周囲の歯肉を喪失したり、顎の骨が陥没するなど、どんどん治療が難しい状態になってしまいます。骨の吸収が進行すると、インプラントやブリッジなどの治療の選択肢が適応外になってしまうこともあります。
歯根破折した歯が、保存できるかどうかは破折部位の位置によって決定されます。破折線が歯の根深くにあったり、縦にパックリ割れている場合は治療が困難な状態です。
しかし、破折線が比較的浅い部分でとどまっていた場合は歯冠長延長術(クラウンレングスニング)という方法で歯を保存できる可能性があります。ただし、歯冠長延長術の適応には細かな条件があるため適応となる症例はかなり限られると言えるでしょう。
破折線が根の深い部分まで達している場合は残念ながら予後良好な治療は困難であり、基本的には抜歯となります。抜歯となった場合はインプラント、ブリッジ、義歯を選んで頂く必要があります。
基本的に虫歯治療などで歯を削った結果、歯茎や骨より下に入り込んでしまった場合は被せ物を作成することは困難です。歯冠長延長術を行うと、歯茎の下まで入り込んでしまった歯質を、歯茎や骨の位置を下げることで歯茎の上に出してあげることができます。
つまり歯根破折においては破折線が比較的浅い部分で止まっており、歯冠長延長術で歯茎の上に出してあげることができれば、その歯は保存可能となります。ただ前述した通り歯の長さや口腔内環境など細かな条件が求められるため非常に限られたものが適応となります。
歯冠長延長を行ったとしても長期的な予後が期待できないものに関してはやはり抜歯という選択肢をとらざるを得ないこともあります。
破折部位を削って除去した歯。歯根が短く、このままでは被せ物ができません。
歯茎と歯槽骨の位置を落とすことで、土台を立てられる状態にします。
土台を立て、その上に被せ物をして治療終了となります。
当然ではありますが、定期検診に通って虫歯を初期段階で発見して治療をすることで、天然の歯の寿命を長く保つことができます。虫歯の発見が遅れてしまい神経を抜かざるを得ない症例もありますが、近年は神経を残す治療の選択肢も選べるようになりました。
大きな虫歯を治療する際、「MTAセメント」と呼ばれる素材を使うことで、露出してしまった神経部分を断髄(覆い隠す)して神経を残すことができます。MTAセメントが適用できるかどうかは実際に虫歯の状態を確認しないと分からないため、治療の際にMTAセメントを使った治療について相談してみるのが良いでしょう。
残念ながら歯の神経を取る治療をして被せ物をしなければならない時に、金属の土台(コア)を入れると残った歯と強度の差が出てしまいます。これを別の素材にすることで、歯との親和性を高めることができます。
保険治療においてはレジンコア(プラスチック製の土台)を使うことで歯根破折を予防できますが、奥歯などの強い力がかかる箇所には適用できない場合があるため、事前に歯科医師と相談して適用できるか聞いてみましょう。
自由診療(保険適用外)にはなりますが、「ファイバーコア」と呼ばれるガラス繊維強化樹脂を使った歯の土台は、弾力性があり強度に優れるため奥歯にも適用できます。白くキレイなセラミックの被せ物とも相性が良く、一見して被せ物と気付かないほど美しい見た目と機能性を持ち合わせることができます。
歯根破折防止策についての研究においても、レジンコアやファイバーコアを使うことで歯根破折の確立を低くすることができると明らかになっています。(※2)
※2)レジンコア(ファイバーポスト,既製メタルポスト)の歯根破折の発生率は、ポストなしおよびメタルコアと比べて低いことが明らかとなった。
歯に負担をかけやすい不正咬合は矯正治療などを用いて直すことができます。矯正専門医の先生に一度相談してみましょう。
開咬や反対咬合、過蓋咬合などは悪い咬み合わせの弊害として、咬合性外傷や歯根破折を起こしやすいというリスクがあります。
早期に咬み合わせの問題を解決しておくことで、歯全体の健康を保つことにも繋がります。矯正治療は見た目の改善だけでなく、咬み合わせを整えるという意味も含んだ治療です。
歯への負担を緩衝してくれるため破折の予防だけでなく歯のすり減りも軽減します。初めは就寝時など時間やタイミングを決めて使用してみましょう。
歯ぎしりや食いしばりがある方は特にマウスピースを習慣化することをお勧めします。実は人は寝ている間にも歯を食いしばることがあます。研究によると、覚醒時(起きているとき)の最大咬合力の平均値は79.0kgfで、睡眠時の最大咬合力は覚醒時を超える116%に及んだ人もおられたそうです。
つまり、80kgを超える力で食いしばっているわけですが、これはクルミでも割ってしまう力です。そんな力が毎日のように歯にかかっていると思うと、いつ割れてしまってもおかしくないと思いませんか?ですから、その緩衝材としてマウスピースを使うことで、歯に直接かかるダメージを軽減する必要があるのです。
マウスピースは咬み合わせに問題があれば、保険適応にて作成が可能です。
※1)覚醒時における最大咬合力の平均値は79.0kgfであり,その最大値は99.7kgf,最小値は51.8kgfであった.
各被験者の最大咬合力に対する睡眠時咬合力の比率は平均53.1%であり,最大のものは睡眠時咬合力が覚醒時の最大咬合力を超えており,111.6%であった.
亀裂が歯の根の深い部分にまで達している場合は残念ながら歯を残す治療は困難であり、基本的には抜歯となります。抜歯となった場合は代わりの歯としてインプラント・ブリッジ・義歯(入れ歯)の選択肢から選んでいただくことになりますが、周りの歯への影響や噛む力の回復を考慮する場合は、インプラントが最も適切な治療と言えます。
歯根破折は多くの場合が抜歯という、歯の寿命として考えると最悪の結末とも言える治療をしなければならない症状です。1本の歯が抜けた程度と思われるかもしれませんが、抜けた歯は隣の歯の寿命にも影響を及ぼすことが知られており、結果として沢山の歯を失う最初のきっかけとなる場合が多いです。
歯が割れないように自分の状態を知り予防することも大事ですが、もし歯根破折になってしまったらそのまま放置せず、適切な処置を経て代わりになる歯を入れる治療を受けることをお勧めいたします。当院では歯科医師とのカウンセリングののち、患者様に合わせた治療を提案させていただきます。予防・治療の相談などお気軽にお問い合わせください。
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