歯科での細かい作業を行う場合、肉眼では見えるものに限界があります。特に歯髄の入っている部分はとても細く、細い歯髄や、歯髄から枝分かれしている管を見逃してしまうことがあります。下顎の奥歯に歯髄の細い枝分かれがある確率は、20〜39歳では50%もあるとの研究結果が出ています。(※1)
このような部分の組織が残ってしまうと、そこから菌が増殖し、痛みが出る原因となったり、骨の中に膿の袋ができてしまうことに繋がります。
※1)マイクロコンピューター断層撮影スキャンを使用して下顎第一大臼歯の近心根における峡部の解剖学的特徴を調べたところ、20〜39歳(グループA)、40〜59歳(グループB)、そして>または= 60歳(グループC)の峡部を示すセクションの割合は、それぞれ50%、41%、および24%であった。
当院で行う精密根管治療では、CT撮影により、3次元的に歯の神経の位置を調べたり、マイクロスコープを用いて神経の管を探し出すことで、このような治療後に感染を残す可能性を減らすことができます。
従来行われていた根管治療に、最新の器具、技術を合わせ用いることで、より精度の高い治療が提供できるようになりました。
CTを用い根管の形態について知ることは、根管治療の成功率に優位に影響するという研究結果も出ています。(独自のマイクロCT研究および上顎臼歯の内外の解剖学的構造に関するメタアナリシス-歯内治療に対する意義-より)
根管治療を行う際に、器具についている菌や、唾液の中に混ざっているばい菌が、根っこの中に入り込んでしまうことがあります。当院では、完全滅菌した器具や、使い捨ての器具を用いることで、治療中に感染を起こすリスクを軽減しています。また、ラバーダムと呼ばれる薄いゴムのシートを歯の周りに装着することで、唾液などの感染の原因が治療部位に触れないように守ることができます。
このような感染を防ぐ処置をすることで、治療後の感染を再発させるリスクを大幅に軽減できます。日本歯内療法学会のガイドラインでも、根管治療の際にはラバーダム防湿を行うことを推奨しています
歯にはそれぞれ「神経」とも呼ばれる歯髄というものが存在します。むし歯で歯のエナメル質や象牙質が侵されると、むし歯はこの歯髄に達します。むし歯が歯髄に達すると、激しい痛みを伴いながら歯髄が侵食され、歯髄炎や根尖性歯周炎という病気になり、治療が困難になっていきます。
通常、むし歯が歯髄に達すると、この歯髄を取る「抜髄」という処置がなされますが、歯髄を抜いた歯は「失活歯」という活動をしていない歯になってしまいます。数年後には治療が終わっていてもある日突然割れてしまうこともあります。また、生活反応を示さないため感染に弱く、二次カリエス(むし歯の再発)などにもなりやすくなってしまいます。このような場合は、歯を抜かなくてはいけない可能性が高くなってしまいます。
このように、失活した歯は大幅に寿命が短くなります。
しかし近年、この抜髄という処置になる可能性がある歯でも、残せる治療法が出来ました。それがMTAセメントを使った断髄という治療です。断髄とはむし歯が進行したところまでの組織を取り除き、MTAセメントによって蓋をすることにより、神経の生活反応を残したまま保存する方法です。もちろん、全てのケースに適応されるわけではありませんが、歯の神経を残す最後のチャンスとしての治療が可能となりました。
(参考文献:半田 慶介, 安田 善之, 斎藤 隆史 2008年 新規直接覆髄剤としてのMineral Trioxide Aggregate(MTA)について北海道医療大学歯学雑誌 ではMTAセメントは神経を残すのに有効な材料として挙げられています。)
前述したとおり、生活歯と失活歯では歯の寿命や耐久性、感染に対する抵抗力が大きく異なります。ですから、我々歯科医師としても出来る限り歯髄を残せるようにしたいというのが本音です。最近では、このことをご存知患者様もおられ、MTAセメントによる治療を希望される方も少なくありません。しかし、MTAセメントは万能ではありません。MTAセメントによる治療が可能かどうかは、歯を削り、むし歯を取り除いてみないとわからないこともあります。ですから、MTAセメントによる治療をご希望されても、むし歯を取りきった際に歯髄を残すことが出来ないとうことも可能性としてあることをご理解頂く必要があります。とはいえ、歯の生活反応を残せるチャンスがあるのであれば、私たちは最後の手段としてMTAセメントをご提案することがございます。しっかり説明を聞いた上で、歯の神経を残したいと思われた際にご決断下さい。
MTAセメントが可能な目安としては、「自発痛」があるかどうかが一つのポイントととなってきます。自発痛とは、何もしていないときでもズキズキ痛むことです。自発痛が出始めると、むし歯が歯髄を侵食している可能性が高くなり、MTAによる治療が困難となります。MTAがあるからまだ大丈夫と思わずに、歯に違和感を感じたらいち早く歯科に通うこと、または定期検診に通ってむし歯が進行する前に治療をすることが、歯を守る上では最も有効な手段と言えます。
種類 | 説明 | 料金 |
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MTAセメント |
露髄部への覆髄や治療、歯髄保護として主に使用する歯科用セメントを利用して、抜髄せずに神経を残す方法 治療期間…1日、治療回数…1回 ※別途補綴の治療機関等がかかります。 |
税込55,000円 ※別途補綴の費用がかかります 詰め物 税込33,000円〜49,500円 被せ物 税込77,000円〜1430,000円 |
※1 参考文献:Van Nieuwenhuysen JP,Aouar M,D’HooreW
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